──アニメ、マンガ、ゲームの業界で働いている人々の何割かは、次々にドロップアウトしていきます。しかし学校を出るときに就職できなかった竜騎士さんは、それでも諦めることなく、コツコツと書き続けてきました。

竜騎士 不思議なものですね。公務員という、もの作りとは異なる世界に行き、一度自分を見つめ直すことができたのも幸いしたんじゃないかと思います。もし私があのとき、ゲーム制作会社に就職できていたら? いまおっしゃられたように、数年でドロップアウトし、星くずのひとつになっていたかもしれない。就活に失敗したからこそ、仕事の合間にでも書きたいと思う心境に至った。そう考えると、いまの自分を作るうえで、私の人生に無駄なことはなかったと思えるんです。公務員の経験は直接的に生きています。『ひぐらし』での沙都子への虐待における児童相談所の対応は、職員研修に使ってもいいんじゃないかというくらい、リアルにできている。役所ほどいろいろな世代の人々が集まる場所はありません。お店にも入れないような辛い境遇の方もいらっしゃるんです。人間というものについて学ぶことができました。
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──就活当時のご自身を、未熟だったと省みていらっしゃるようですが……。

竜騎士 おそらく就活をしていたときの私は、巨大なゲーム制作会社に願書というボールを送り、採用というボールを返してほしいと思っていた。箔のつく肩書きが欲しかったんでしょう。ボールは届きませんでした。投げる方向が違っていた。ほんとうはユーザーに向かって投げるべきだったんです。ゲーム制作会社に認めてほしいという甘ったれた考えで、ボールが届くはずがない。本当にゲームを作りたいやつは願書を書く前に、自分でゲームを作っていますよ。会社に入るのは就職であって、それが即ち創作ではない。当時の私は自分のゲームを他人に作ってもらおうと、頼る気持ちがあった。例のゲーム制作会社さんには感謝しています。そんな男を採らないでくれて本当によかった!

──「そんな男を採らないでくれて本当によかった」「当時の自分は甘ったれていた」という、謙虚な気持ちになれず、苦しんでいる作り手もいると思います。もし竜騎士さんからおっしゃっていただけることがあれば、一言お願いします。

竜騎士 趣味で喰おうと思わないほうがいいかもしれないな。趣味で喰わなければならない、という昭和からの妄執があるような気がするんです。その妄執から逃れている趣味のひとつが釣りです。釣りを趣味にしている人は、釣りでお金を得ようとは思わないですよね。お給料で買ったリールを持ち、長期休暇をとって島へ行き、思う存分釣りを楽しむ。もの作りの路を進むにあたって悩んでいる人は、いま持っている趣味を釣りのようなものだと思ってほしい。そうすれば、仕事をしてでも続けられる、と思えるじゃないですか。二足のわらじでもやっていけるくらいの根性がなかったら、制作の仕事はやっていけないですよ。副収入が本業の収入を上回りそうなら、そのときプロになるかどうか、考え直せばいいんだと思います。働くと嫌な仕事に耐える根性がつくから、もの作りに生きてくるんですよ(笑)。

「制作会社に採用されなくてよかった」原作者・竜騎士07の挫折と下克上(後編) - 日刊サイゾー
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